営業マンを見ていると、大きく分けて2つのタイプの人間がいるなと思います。1つは事前にしっかりと下調べや準備をしてから行くタイプ、もう1つはヘンに先入観を持たないために情報収集をしないで突撃するタイプです。人それぞれのやり方もあるのでしょうが、会社の方針もあるようです。私が最初に保険営業をスタートした時には、「相手のイメージを勝手に想像せず直接ヒアリングした方が良い」と教えられたので、事前情報はほとんど無い状態で面談に臨んでいましたが、その後転職した会社では「事前の下調べがとても重要だ」と教えられました。どちらも大切なことを言っているのでしょうが、教わる方は迷いました。まあ当時と時代は大きく変わりましたので、いずれにしても今は「効率の良い営業方法」が選ばれることは間違いないでしょう。
「効率の良い営業方法」とひと口に言っても、「絶対に上手くいく成功法」みたいなものは営業の世界には無くて(絶対に失敗する方法ならあるけど)、やってみないと分からないという部分が非常に大きいのが現実です。やってみないと分からないと頭では分かっていてもできることなら失敗はしたくない…どうやったら失敗しないで済むのだろうか…色々と策を練って、ああでもないこうでもないと言っている間に全く動けなくなった、そんな経験が皆様にもありませんか?特に営業経験が浅いうちはやる前から失敗を恐れてしまいがちです。じっと考えてばかりいるとどんどんやる気を失って一歩前に踏み出すことが難しくなります。今週のコラムは、しっかりと考えて効率の良い営業をすることは大切だけど、考えすぎて動けなくなることもあるよね、という視点で考えてみました。部下の育成が苦手な幹部がいる会社の社長にはぜひ読んでいただきたいです。
先日読んだある本にこんなことが書いてありました。「効率よく成果を出す人には共通点がある」と。何でも、社内で評価が高い上位5%の社員とそれ以外の一般社員との違いを分析したのだそうです。その5%社員の共通点とは、
・自分の弱みをさらけ出すことに抵抗がない
・忙しい時でもちゃんと「振り返り」をしている
だそうです。そもそもトップ5%に入るような人に弱みなんて少ないのでは?と個人的には思ってしまうところですが、「まだまだ自分には知らないことがある」という謙虚さを持っている人が多いそうです。また、どんなに忙しくても定期的に自分の行動を振り返る習慣を持っていて、特に何か問題が起きた時には「なぜ起きたのか?」をすぐに分析し、次に失敗しないための対策を立てて計画的に行動していくのだそうです。これだけ聞いただけでも相当効率の良い仕事をしていそうな光景が目に浮かびますよね。
ここで気になるのが、このトップ5%の人達が行動を起こす時のはじめの一歩。しっかりと考えてバッチリ準備が整ったから歩き出したのか、歩きながら色々考えたのか?です。
多分、日頃から物事をしっかり考える習慣が身についていると思うので、何も考え無しに行動することはないと思いますが、かと言って完璧な準備が整うまで動かないか?と言えばそうでもないような気がします。ある程度の方向付けができたら後は動きながら考えて、動きながら修正して、そしてたまに立ちどまって振り返る…といったところではないでしょうか。
以前、こんな経験があります。
とにかく厳しい上司の下で働いていた時のこと。訪問先もアプローチ方法も営業ツールも自分で考えなさいと言われたので、自分が思うやり方でやっていると、「なぜ事前に相談しないのか?」と言われました。そうか…事前に言っておかないと叱られるんだ、と思った私は、「明日はこのような予定でおります」と報告をしたところ、「そのやり方で本当にうまくいくのか?」「そのリストで本当に効果が出るのか?」「もっと良いチラシは無いのか?」と細かく言われて、結局その上司の言う通りにやる羽目に。普段から、「四の五の言わずにもっと動け!それでもやる気はあるのか?」と言われていたからこそ率先して動いていたのですが、実際に動き出してみたらこの調子。やる気はあっても動けない…アクセルを踏んでいるそばからブレーキを踏まれているような状態でした。
「やる気」とは、最初から持ち合わせているものではなく、動きながら改善していく中で高まっていくものではないかと私は考えています。思った通りの結果が出た!うまくいかなかったけどうまくいかない理由がわかった!改善したら結果につながった!など、動いてみた結果によってやる気が起き、高まっていくものだと思います。事前の準備や、「失敗しないために色々と想定すること」はとても大切ですが、考え過ぎると動きが止まり、思考も停止してしまうのです。私が最初に営業を教わった会社で、「とにかく行ってこい」と言われたのは、もしかすると色々と考え過ぎて動けなくなることを避けるためだったのかもしれません。
脳科学者の茂木健一郎氏は、「何かに取り組んだり行動したりするのに“やる気”は必要ない」と断言しています。そして、やる気がないことを言い訳にして行動しないことの方が問題であると述べていました。
さて、皆様の会社ではいかがでしょうか?
やる気がある社員こそが行動すると考える幹部はいませんか?
行動しようとする部下のブレーキを踏んでしまう幹部はいませんか?
部下のやる気は、具体的な行動計画とそれを安心して実践できる土壌に育つものなんですよ。