「社員のやる気アップや高収益の仕組みにはブランドづくりが大切だと何かの本で読みましたが、我々のような中小企業には“ブランド”なんて無縁でして…。でも、世の中には地方の小さな会社でも上手くブランド化できているところもあるんですよね…。」
先日、ご相談にいらした社長様のお話しです。元々は社内の営業強化のご相談でしたが、「社員に何を伝えれば、もっとやる気になってくれるのか?」「会社に活気を持たせるにはどうしたら良いのか?」ということから、話しは“会社のブランドづくり”に…。そもそもの営業力を考えたとき、価格やスピード以外で勝負できるようにするには、やはりブランドづくりが大切ですよね、と。
我々が企業ブランドを考える時、大きく2つの側面から見ることができます。ひとつは製品や商品・サービスそのものや、価格などのハードな部分。そしてもうひとつは、組織文化や社員の質、おもてなしなどソフトな部分です。弊社でお手伝いするブランディングとは、自分達の手で社内資産を見える化し、課題を抽出・対策を立て、そしてチームで実行できる組織づくりを目的とした、正に後者のソフト面の強化です。
一見、商品パッケージやネーミング、付帯サービスなど目に見える部分は差別化しやすく、お客様からも分かり易いというメリットがあるため、多くの企業のブランディングは前者のハード面から取り掛かるケースが多いように感じます。一方、組織や社員の“質”の部分は非常に見えにくいことから、後回しにされてしまいがちなのですが、最終的に顧客から評価されるのは社員一人ひとりの“質”であり、「色々やったけど一向に業績が上がらない…」といった経営者の悩みのモトはその部分であることも少なくありません。
これまで長く続いてきた会社ほど、パッケージなどの外観だけ綺麗にしても中身がそれに伴わないケースが多く、社員が同じ方向を向いてくれない、いくら言っても行動してくれない…といったお話しをよく聞きます。経営者にしてみれば、せっかくの新戦略なんだからもっと積極的に動いてくれよ…と思うところですが、なかなか社員の意識が変わらず、イコール行動も発想も変わらない、そして結果が出ないことに頭を悩ませることになる訳です。会社の成長を考えた一大戦略も、それを売る肝心な社員には全く伝わっていないという事は残念なほどによくあることです。このようにこう着してしまっている組織を活気あふれる組織に変え、お客様から高く評価される社員に変化させるためには、必ず必要なステップがあります。
組織改革というと何やらとんでもなく大掛かりな事のように聞こえますが、どんな数の組織であってもまず初めにやるべき事は…「話しをすること」です。え?たったそれだけ?と思われるかもしれませんが、全てはそこから始まります。普段の業務連絡的な会話ではなく、お互いを労う言葉やリラックスした会話は、固く凝り固まった思考回路を柔らかくほぐしてくれるもので、それを無しに何かを一生懸命伝えたとしても、ほとんど相手には伝わっていないものなのです。
長く続いた会社や、ある程度の人数がいる会社になると、それぞれの役割分担がされており、朝、出勤すると“自分がやるべきこと”を片付けることが仕事になり、それが滞ることは自分の評価につながってしまうため、隣の人が困っていてもつい見て見ぬふりをしたり、これまで通りのやり方から抜け切れなかったりする…そんな会社を数多く見てきました。そんな会社の社員の顔には活気が無く、入社の動機や当時抱いた夢や希望をいつの間にか忘れてしまっている、そんな浮かない表情でお客様に接していることも少なくありません。巷に溢れる“快適なサービス”や“輝く笑顔”に慣れてしまったお客様は、その“業務的”な空気にはとても敏感で、いくら良い商品を提供してもその評価は下がる一方です。たったひと言の対応でも“仕方なし感”は残念なほどに滲み出てしまうものなのですから。
経営者の皆さま。たまには少しだけ時間を取って大切な社員と話しをしてみませんか?最近良かったことや今ハマッていること、仕事で困っていることなど…ゆったり話せる環境はありますか?自分が目指す会社について語り、少し高い目標に向かって歩み、自信とプライドを持って接客できる…そんな理想の社員像について語っていますか?会社のブランドは外部の業者がつくってくれるものでは無く、社長の言葉が創り上げるものなんですよ。