営業という仕事には何か特別な能力が必要なように感じる方も多いですが、続けていくうちに備わって来る知識や力はありますが、生まれ持った能力や才能的なものは全く必要ありません。その人間が元々持っている力や、会社の体制・商品の魅力など、いくつかの要素を組み合わせ、それを発揮できるステージをつくれば誰にでもできる仕事です。先日、そのようにお話しをしたところ、ある社長にこう言われました。
「うちの社員はみんなモチベーションが低くてやる気があるように見えない…そんなだから営業成績も振るわないし社内にも活気がない。もっと才能がある社員が来てくれれば良いんだが…」と。
そこで、ある女性営業マンのことをお話しすることにしました。
その女性は学生時代からとてもおとなしい性格で、人前で話すのも苦手で友達も少なく、どちらかと言うと家で一人で過ごすのが好きなタイプ…将来は事務系の仕事か早く結婚をして専業主婦になりたいと思っていました。
しかし、家庭の事情でその願いは叶わず、しっかりと稼げる仕事に就く必要に迫られました。そこで選んだ仕事は「営業職」。多少の覚悟はしていたものの、やはり飛び込み訪問や電話営業の恐怖に耐えられず段々と仕事が嫌になって職場に向かう足取りも重くなっていきました。世の営業マンの中には早くもこの段階で挫折して逃げ出してしまう人もいますが、この女性には逃げ出さずに済んだある理由がありました。それは、「営業の楽しさを教えてくれる上司がいたこと」です。
毎日の飛び込み訪問に率先して同行し、格好悪く断られる姿を堂々と見せてくれる上司がいたのです。その上司は、決して優れた営業スキルの持ち主ではなく、どちらかと言えばトークも下手くそ、商品知識もイマイチでしたが、熱心さだけは誰にも負けない人でした。一緒に行動をする中で、子育ての苦労や仕事と家庭の両立で悩んだこと、嫁姑問題についても面白く聞かせてくれて、訪問先で断られる恐怖よりもいつしか会話の方が楽しくなってきていました。一方で、口のきき方や服装など細かいことを厳しく注意してくれましたので、そのうちに何となく“営業マン”らしく見えるようになりました。
その情熱に引っ張られながら営業活動を続けていると、今度は毎月の目標を決めるように言われました。何件訪問して、何件の成約を目指すのか?具体的な目標を一緒に立て、お客様との面談内容を日誌に記録しようと。そしてその日誌は毎日必ず読んで細かくコメントをくれました。良いところには「頑張ったね!」「良かったね!」「もっとこうすると良いかも!」と書いてあり、課題があれば「…次はこういう風に聞いてみたらどうでしょう?」とか、「このような言い方に変えてみてはどうだろうね」などとアドバイスが書いてありました。週に一度はお昼ご飯を食べながらミーティングもしました。
ある時、小さな契約が1件決まると、その上司は自分のことのように喜んでくれました。そして会社の朝礼で嬉しそうにみんなに報告をしてくれて、その女性は社員みんなから拍手を浴びることができました。初めての契約です。入社から3カ月、本当に嬉しかった…契約が取れたことも嬉しかったですが、それよりも、諦めずにやり続けた自分を誇らしく思った、そんな瞬間でした。
…この女性営業マン。
実は私のことで、この時の上司とは保険代理店の社長の奥様です。私はこの3カ月間があったおかげで、その後転職はしましたが保険営業で多くの実績をあげることができ、当時抱えていた多額の借金を返済することができました。そして、内気な性格で営業には不向きだと思っていた自分が営業という仕事に誇りを持つことができ、その魅力を多くの人に伝えたい!と思うほどになりました。何の取り柄も能力も無かったことは自分が一番よくわかっています。だから営業に特別な能力は必要ないといつもお話ししています。
経営者の皆様にお伝えしたい「営業を成功させるために大事なポイント」が今の話の中には3つあります。
1つめは、経営者や上司に「仕事への情熱がある」こと。
2つめは、「具体的な行動計画」と適切なフィードバックがあること。
3つめは、「心が満たされる場がある」こと。
です。
それぞれについて見ていきましょう。
1.経営者や上司に「仕事への情熱がある」
営業が成功する=儲かって活気がある会社の特徴の一番は、経営者が情熱を持っていることです。それは、売上の達成に対する情熱だけでなく、商品開発やお客様の満足度向上など全てにおいて必要で、これが欠けていると会社は冷え切って活気を失ってしまいます。社員を動かすのもお客様を動かすのもまずはそこに情熱があることが第一、何をするにも情熱がなければ人は動かないからです。どんなに立派な経営理念や事業計画を掲げていても、経営者が目先の数字ばかりを気にしているようでは、成果を上げることは不可能なのです。
2.「具体的な行動計画」と適切なフィードバックがある
よく、「PDCAが大事だ」と言っている会社がありますが、うまく回っていない組織の多くはP【計画】が雑(現状把握や現状分析が不十分)だったり、目標までの具体的な工程が描けていなかったり、C【評価】があまかったりするところを多く見かけます。
やる気や情熱は大事だし、初めは失敗もつきものなのである程度の寛容さも必要ですが、きちんと評価できる仕組みは大切です。最近は部下を叱れない上司も増えていると聞きますが、それは評価の基準が明確でないのも原因の一つではないでしょうか?
3.「心が満たされる場がある」
「心が満たされる」とは、やりがいを感じることができ、且つ、周囲から認められる環境があることです。仕事は生きるためやお金のためだけにやるものではありません。自分の可能性を信じ挑戦した時に感じられるやりがいや、それを達成した時には誰かから認めてもらいたいという認欲を満たしたいと誰しも思うものです。活気のない会社にありがちなのが、「無関心」と「無表情」です。それぞれが「自分の仕事さえこなしていればいい」「日々の業務に問題なければいい」と考えている会社が伸びることは決してありません。お互いを認め合う場づくりは活気がある会社をつくるためには不可欠な要素です。
いかがでしょうか。
御社には営業熱のもとになる経営者の情熱はありますか?
営業熱を持続させ、結果を生み出す具体的な行動計画と認め合う風土はありますか?
御社の営業成績が振るわないのは社員の能力とは別のところに課題があるのではないでしょうか?
営業の成功は社内の環境で決まります。
ぜひ一度社内を見渡してみてください。
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