10年前、保険営業で毎日飛込みをしていた頃、「保険屋さんは、契約するまでは一生懸命通ってくるクセに、一度契約をしてしまうとなしのつぶてだからね」と何度も言われたことがあります。その日、その月、売上が上がれば良い、今月のノルマさえ達成できれば良い、そんな風に思う営業マンが多かったせいでしょうか。最近では、契約内容の確認やご相談窓口の拡充など、既契約者のサービス向上に重点を置く会社も増えてきています。
また、店頭で販売されるスマートフォンやパソコンなども、ただ安く販売しているだけではスグに売上が頭打ちになり、“シニア向けラクラク使い方教室”や、“困った時の駆け込み寺”的なサービスで顧客の囲い込みを図るお店も増えてきました。
ある大手製造業も、これまでの“もの売り”から“コンサル重視”へ転換!と大きく新聞に取り上げられていましたが、こちらも単なる製造業からサービスを提供できる体質へ改善して行こうという動きのようです。「売ったら終わり」の価格競争ではこれ以上の成長は見込めないとの判断でしょう。次々と新規の見込客を見つけるのは大変な時代、繰り返し買ってもらえる顧客や紹介をくださる顧客を増やして行くことができなければ生き残っていくことはできないのです。
やっとの思いで一度購入してくれた顧客も、売りっぱなしで放っておいては決して貴方の会社のファンになってくれることはありません。常に進化し、情報を発信し続け、顧客の満足を得られるような付加価値を提供していかなければならないのですが、それでは、どうやって顧客に喜んでもらえるプラスαのサービスを提供すれば良いのかわからない…と悩んだ経営者の方からご相談をいただくケースが増えています。これまでの“ものに頼った営業”から抜け出すことは思った以上に大変だからです。結果や効果が目に見えないサービスに価値を感じていただくことは、想像以上に難しいことなのです。仮に、新商品を開発したり、パッケージやネーミングを工夫したりして、「ブランディングはできている」とおっしゃる会社も、結局はものや形に頼っており、それではなかなか顧客に浸透しないのです。
私が考えるブランドとは、顧客と一緒につくり上げる信頼関係であり、それを構築する過程がブランディングだとお伝えしています。そのために必ずやらなければならないことは何か…。それは、相手が求めているものは何で、自分達は何を期待されているのか、そのために何を大切にし、どこへ向かって行くのか…というブランドコンセプトを明確にすることです。それが無ければ、社員に理解してもらうこともできず、勿論営業マンもそれを伝えることができないので、結局“商品売り”から抜け出すことができないのです。
経営者の皆さま。ブランディングには、明確に伝わるコンセプトが絶対に必要です。自社のブランドとは、自分勝手に考えて決めるものではなく、他人が認めてくれて初めて本物になるのですから。