応援コラム

安売り競争から脱し、適正対価で勝つために必要な「言葉の定義」

 

明日から新年度を迎えるにあたって、次こそは売上を飛躍的に上げて事業を大きく成長させたいと考える経営者も多いと思います。そのために、やる気があって自社の風土に合った人材を採用したいとか、営業部隊がもっと積極的に売ってきてくれないかなとか、そのように考えていませんか?

 

もしも今、あなたが思う人材が社内にいない(又は育っていない)とか、既存顧客を見渡しても理想的な顧客ではない…と感じられるのであれば、それは会社の見せ方・伝え方に問題があると言えるでしょう。

 

先日、ある会社の企業説明会の様子を見る機会がありました。そこは、慢性的な人手不足の上に社員は年々高齢化し管理者は全て50代、何としてもやる気のある若い社員をゲットしたいところです。その会社は、他社には無い技術のおかげで大手の仕事を受注し、売上も安定しているので給料は比較的高め。今いる社員の満足度は高いようです。

 

ただ、会社説明が始まって担当者が口にしたのは、業種や規模、社員数、仕事の内容、保有する機械や設備、取引先、給料などの待遇…といった決まり切った情報と、社員旅行や新年会・忘年会などの様子でした。地方にしてはかなりお給料高めなところと、社員同士仲が良いアットホームな雰囲気を伝えたかったのだと思いますが、求職者の反応はいま一つ。特に話が長かった機械や設備については、話している本人は夢中でしたが、聞いている側は少々退屈そうでした。

 

本来であれば、他社に負けない技術の素晴らしさや、それを支える社長や社員の意気込みや使命感、小さな会社に仕事を頼んでくれる大手顧客の声や関係性など、その会社ならではの魅力(求職者が聞きたい情報)をきちんと伝えるべきなのに、機械や設備・社員旅行など話したい情報を伝えてしまっていたために、大事なことが伝わらないまま終わってしまった…というケースです。

 

この会社に限らず、会社説明をする担当者が長年同じだと、内容も同じ・発想も考え方も同じになってしまい、現状に合っていないということが起きてしまいます。結果、毎年採用が思うようにできず、「今年もダメでした」と担当者から聞いた社長は、「ちゃんとうちの会社のいいところをアピールしたのか?」「はい…」というやり取りが延々続けられることになります。やる気があって自社の風土に合った人材を採用したいのであれば、自社の考え方や社員に望むこと、うちに入社することの意味や可能性などをきちんと伝えるべきで、結果、彼等の意識も大きく突き動かされるのです。

 

そして、この「自社の可能性」を伝えることは、共に成長して欲しいという社員へのメッセージとしてしっかりと伝わり、入社後の教育の柱になるのです。

 

“うちの会社のいいトコ”という言葉…社長が思うところと他の社員が思うところにズレがある会社は意外に多いものです。大切な言葉ほど定義をしっかりしておく必要があります。

 

そしてこれは顧客に対しても同じです。

 

長年取引してくれている顧客であっても、他社からそれと同等かそれ以上のものを提案された時にどう思うでしょうか?その違いが分からないままであれば、安さや早さなどで他社を選ばれてしまう可能性が大いにあります。

 

顧客から見えるあなたの会社は、商品やサービスを通して見えるほんの一部分だけです。その商品やサービスの魅力が低下したり、他にもっと安くて同じようなものが表れたりすれば、たちまち価格競争に巻き込まれてしまいます。日頃から自社が大切にしていることや考え方を伝え、顧客の中の価値観を常に引き上げるよう働きかけておく必要があります。初めは新鮮だった提案や商品の魅力も、お互いに長い付き合いになると日常化して価値を感じにくくなってしまうからです。

 

特にこの時期、異動などに伴って顧客の担当者が変わることがありますので要注意です。以前の保険時代には企業の保険担当者が変わるというのはよくあることでした。新しい担当者にしてみれば、「〇〇保険」と聞いた時点で全てが同じもののように扱われてしまいました。内容の違いや他社商品との違い、事故があった場合の対応の違い、契約の際に念入りに行なったヒアリングや現地調査のことなど、その会社にとっていかに大切な契約であるかを伝え続けなければ、「○○保険」と書いた他社の見積りと簡単に比較されてしまう現実がありました。

 

これは、顧客の保険担当者のせいではなく、きちんと価値を伝え続ける我々の責任だといつも思っていました。「○○保険」が持つ意味は、私にとっては本当に顧客を守るための特別なものでしたが、お客様にとってはどれも同じに感じるからです。この意味をきちんと伝えることは、自社の価値を理解してもらい、顧客をより高い意識レベルに引き上げることにつながるのです。

 

言葉とは、その人が聞いたままに解釈しその人なりに伝えていくものです。

一つの言葉でも、聞き手によってその捉え方は大きく異なり、価値あるものも全く意味のないものになってしまう可能性を持っています。

 

自社が使う言葉をしっかりと磨き上げ、定義づけていくことは、自社を守り、やがて自社のブランドを構築する柱になっていくのです。

 

皆様の会社の大切な言葉は、きちんと定義づけられていますか?

 

 

自社なりの「言葉の定義」をつくりたいとお考えの経営者の皆様、ぜひお気軽にご相談ください。自社の価値を言語化する「事業発展ストーリーのつくり方」は、オンラインセミナーでお伝えしています。(セミナーの詳細はこちら

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