「弊社では、お客様に喜んでいただくために定期的にイベントを開催し、たくさんの方に参加していただいています。毎回大好評で、おかげさまで前回も大盛況でした!」
先日ご相談にいらっしゃったあるお茶屋さんの店長さんのお話しです。自社の商品や同時に提供できる“ゆったりとした贅沢な時間のすごし方”をこよなく愛し、その考え方に賛同していただける方々をお招きしての定例イベントはとても楽しく盛り上がっているようです。普段ご相談にいらっしゃる企業様の多くは、この部分で悩む方が多く、逆に素晴らしいですね~というお話しで盛り上がっていたところ、おもむろにご相談の本質へ。
「そうなんです。我々は一生懸命企画をし、お休み返上でイベントを運営し、喜んでいただいて次につなげる努力をしているのですが、問題はその後なんです…」と。社内では、イベントの開催や情報発信など企業のイメージ戦略は店舗スタッフの仕事で、企業向けの営業(いわゆるBtoB)をする実働部隊は営業部、という役割分担のようです。お茶の楽しみ方やそれがもたらす効果について徹底的に勉強し、その価値を伝えたいと頑張る店舗スタッフと、「所詮、売上の大半はBtoBなんだから、値段で勝負だよ」と考える営業マンとの温度差は広がる一方で、社内のブランドイメージがなかなか定着しないのだそうです。今のままで良いのか?どうするべきなのか?…というのがご相談のようでした。
企業のイメージ戦略(特に人や資金などの資源が限られた中小企業にとって)は、なかなか一朝一夕に行かないのが現状で、そんなのん気なことを言っていても商売アガッたりなんだよ…という営業部の言い分もごもっともです。先ほどのお茶屋さんでも、ノルマに縛られない店舗スタッフは、売上を上げることよりもお客様に喜んでいただくことを重視し、また次回も参加してくれることや、自身のSNSを使って情報発信をしてもらいたい…ということが目的となっているはずです。一方、毎月の売上ノルマに追われ、毎週・毎日行動結果を問われる営業マンはそんな悠長なことをしなくても、他社に負けない価格設定が最優先…と考えてしまったとしても、それぞれの役割が異なるため仕方の無いことでしょう。
ここから先は経営者の判断なのですが、利益幅の少ない商品を数多く売る手法には間違いなく限界があります。そこから先の戦略がきちんとあるのであれば別ですが、ただ、現状の売上を落としたくないという考えの延長線上では残念ながら画期的な解決方法は生まれません。過去にはそれで売上が立っていたとしても、10年先を考えたとき、本当にその体制のままで良いのでしょうか?自社にしかできない価値を提供し、付加価値を適正な対価で評価してもらえる企業に変化して行く努力や、「また行きたい」「次もここで買いたい」と言ってもらえるブランドづくりを時間は掛かるけどやって行こう!と決めるのか。
その時に大切なことは、提供する付加価値を必ず“顧客目線で考える”ことと、こちら側が理想とする顧客像を明確にすることです。当たり前のことなのですが、意外とできないことが多いのです。先ほどのお茶やさんの例で言うと、美味しいお茶にこだわることは大切ですが、顧客が再現しにくい(入れ方が難しい、面倒)とか、味が本格的過ぎて馴染みの無い人には抵抗がある(お茶離れをした年齢層の若い人向けなのか?お茶を極めた人用なのか?)といったことも当然考えていかなければならないのですが、意外とそれらの要素を後から考えて苦戦している企業も多く存在します。「自分達が良いと思うものを一生懸命つくりました!さあて、これをどこで売ろうかな?」という発想です。しかし、評価するのは顧客であり、当然答えは顧客の中にあります。その相手が誰で、何を求め、どうなることを望んでいるのか?を考えていかなければならないのです。かなり大変な作業ですが、これら無くして次の発展はあり得ません。現状の営業体制を一新するためには、まずは「変える!」と決めることと、次に、提供する価値をお客様の立場で考えることが重要です。
経営者の皆さま。現状の低価格競争から抜け出す準備はできていますか?次の高付加価値戦略へのイメージは描けていますか?それは顧客目線ですか?徹底的に顧客の目線に立つと開ける新たな道がそこにあります。御社には見えていますか?