「ウチの社員はみんなマジメで大人しく、一生懸命働いてくれています。特に技術系の人間は勉強熱心で、昨日も新しい資格を取ったんだ!と報告に来てくれました。」
先日、経営者が集まる会の飲み会に参加した時の会話です。この社長様に限らず、「ウチの社員は休まない」「辞めない」「きちんと日報を出す」「笑顔で挨拶ができる」…と、社員自慢をする経営者は多くいらっしゃいます。どの業界も人手不足で悩む昨今、優秀な社員が居てくれることはこの上なく嬉しいことですよね。これからもっと事業を大きく成長させたい、新たな分野に挑戦したい、と考えた時、まず頭をよぎるのは資金よりも人材…という経営者も少なくないでしょう。そんな中にあって、自慢の社員がいてくれることはとても心強いもの。いつも、「素晴らしいですね~」と心から感心してお話しを聞くのですが、かなりの確率で
「いや~でもね…」
というセリフが飛び出します。
既にお察しの方も多いと思いますが、「でもね…マジメ過ぎるんですわ。」と続くのです。マジメ過ぎて何が悪い?と言いたいところですが、仕事のやり方もお客様とのやり取りも、社内のコミュニケーションも何もかも、言われた通りに頑張るタイプが多く、みんな道を外れようとしない。大きな失敗が無い代わりに大成功も無い。何もかもがフツー過ぎて、たぶん社長様方から見ると物足りなく感じてしまうのでしょう。
以前訪問したある企業にもマジメで一生懸命タイプの営業マンがいて、彼はテレアポも商品説明もマニュアルどおり上手にできるし、とにかく喋りにソツがない。聞いていて安心感はあるものの、聞けば、一向に業績が上がっていないらしいのです。これはコマッタと、その社長様にご相談をいただき、彼の飛込営業に同行してみると…その理由が分かりました。
彼の第一声はこうです。
「この地区の担当になりました◯◯です。本日はご挨拶で回っております。」
…その昔、私が飛込をしていた頃には確かにこのトークを使いましたが、それはもう10年も昔のこと。最近の営業マンなら、もっと気の利いた訪問をしたいところです。当時でさえ、せっかく会えた相手の社長に向かって「ご挨拶です」…と言ったら、「この忙しい時にいい加減にしろ!」と叱られたものです。現代であればほとんどの企業がホームページを持っているので、せめてこれから向かうぞ!という前にちゃんと見ておき、会話のネタぐらいは準備しておきたいものですね。縁もゆかりもない無い場所に突然飛び込むのに、何の準備も無しではあまりに情けない限りです。その彼も、案の定、全く相手にしてもらえず門前払いです。では、手法を変えてテレアポからの訪問ではどうでしょう?こちらも、折角取れたアポイントにも関わらず、訪問するとこちらの商品を一生懸命説明するだけ…「わかった、考えとくよ」と言われ、それっきりになっているのでした。
新規開拓は決して楽な仕事ではありませんが、事業を長く大きく成長させて行くには新たな顧客を創造する取り組みを避けて通ることはできません。これは訪問型の営業に限らず、小売りもサービス業も考え方は同じです。常に新しいお客様を惹きつけることができなければ現状維持から後退につながって行きます。
話しを戻して、先ほどの営業マン。心が折れない飛込営業をするために大切なポイントを大きく3つ伝えました。
1.相手に興味を持とう!
ホームページや業界ニュースのチェックも良いですが、私が営業マンだった頃には、とにかくその会社の周りを何度も見て歩きました。社長の車や出入りの業者、社員の駐車場(車の数でおおよその人数を把握できるし、車の良し悪しで年収の予想をしたりしたものです…)など、自分の目で直接見ることで感覚が鍛えられるし、良い会社だと思えば思うほど、“絶対契約取るぞ!”と力が入ったものです。
2.自社の独自性をアピールしよう!
相手も忙しい中せっかく時間を取ってくれた、その大切な1分1秒をムダにすること無く、自分(自社)の力を伝え、“貴方の役に立てます!”と言い切る準備をしておきましょう。そのための、事前の棚卸しと言語化は少々手間を掛けても必ずやるべきです。せめて、自社(商品)の成り立ちやこだわり・実績くらいはコピー用紙1枚くらいにまとめておく必要があります。
3.図々しくなろう!
いくら素晴らしいマニュアルやスクリプトを作って100回練習しても、相手は百人百様。絶対に練習通りにはいきません。断られて当たり前、うまく行かなくて当たり前…でも、「そうは言ってもそこを何とか…」と、“ニコッ”と笑って一歩前に踏み出せる心の強さを持つことです。最初はうまく行かないことばかりですが、今の苦労は3年後に大きな力となり、確実に実を結ぶのだという強い心で図々しくいきましょう。
経営者の皆さま。御社の営業マンはマジメでワンパターンな飛込営業で心が折れていませんか?真っ暗なトンネルの中でしょんぼりしていませんか?根性を鍛えるだけが目的の飛込なら良いですが、今のままでは実績が伴わず長く続けることは困難です。初めて会った相手にも「ぜひ話しを聞いてみたい」と思わせ、自社の営業マンが「自分の話しを聞いて欲しい」と胸を張り、ニッコリ笑ってできる飛込営業3カ条…その装備をさせるのは経営者の皆さまの仕事ですよ。