「最近の若い社員は、何をやっても長続きしないんですよ。特に営業部に配属すると3ヶ月持てば上等でしょうか?心が折れてすっかりやる気を失ってしまって…。」
先日ご相談にいらっしゃった食品製造・卸会社の経営者のお話です。業界的に、どこへ行っても価格競争が激しく営業マンにとっては厳しい戦いが続いているそうで、それに勝つために徹底的に低価格商品の提供にこだわっていらっしゃるそうです。
確かに、最近は何を買うにも他社比較が常識で、個人向けの小売店では、「ウチより安い商品があれば返金します」と謳うところも多くなってきました。「1円でも高ければおっしゃってください!」というメッセージは確かにインパクトがあるし、法人営業においてもその理屈は同じことです。では、本当に安くなければ勝てないのか?お客様は一体何を評価し、その順番は常に「価格」が優先なのか?今日は、私が考える「顧客からの評価」についてお伝えしたいと思います。
弊社では、顧客からの評価を引き上げるための“魅力ある人材が育つ組織づくり”のお手伝いをしていますが、まずは、顧客が何を評価しているのか?について考えてみます。大きく3つ…
①商品・サービスそのものの評価、②社員の評価、③会社の評価、だと思っています。①の商品・サービスの評価には、機能性や見た目・品質・その効果や当然そこには“価格”も入ってきますが、ここで大切なことは、まずは“良いモノである”ことが大前提、使い勝手の良さや安心して使えることが求められています。その上で、「同じ品質であれば安い方が良い」となるはずです。
次に②社員の評価。商品知識や解決・提案能力などのスキルやコミュニケーション力、新しいことにチャレンジする姿勢や明るく朗らかな性格も求められるでしょう。また、「どれだけ会社が好きで、イイところを語れるか?」という部分も大切にして欲しいところです。更には、顧客のニーズに対応できる柔軟性や自由度も問われるでしょう。
そして③会社の評価は?と言えば、歴史や実績・資産などの定量的な部分と、一貫性(ブレない)・将来性(明るい未来)・市場性(社会から必要とされているか?)などの定性的な部分に分かれます。特に、新規事業や新商品など、新しいことに挑戦する姿勢や後継者・若者の育成など、未来につながる取り組みは非常に高く評価されます。
ざっくりと顧客の評価について考えてみましたが、これだけ考えられる評価基準に対して、冒頭の経営者の言葉を思い出してみると…どうやら「価格の高い・安い」というものさしが大きなウェイトを占め、それ以外の大切な事がほとんど伝わっていない(正しく言うと伝わる努力をしていない、又はそれ以外の大切な事に気づいていない)ように感じませんか?そんなこと無いよ~と言われるかもしれませんが、現実には非常に多いんですよ…こういう会社。特に商品売りのスタイルが定着している会社では、他社の商品分析に熱心で、量や機能のワリに格安であることをアピールする営業マンが非常に多いことに驚きます。
自分達が提供している商品・サービスの価値、自社の社員の価値、そして会社の価値。それらの本当の価値を伝えることをしないまま、単に値段だけで勝負し、それでも断られるということが続くと、これは新人営業マンに限らず誰でも心が折れてしまうのではないでしょうか?人は誰からか受け入れてもらいたい、誰かに認めてもらいたいと思う生き物であると同時に、強いミッションを心に抱いたり、好きで好きでたまらないことに挑戦したりするときには、自分でも驚くほどの力を発揮するものだからです。
経営者の皆さま。御社の社員は低価格以外のメリットを語ることができますか?自分の能力・会社の価値を正しく認識していますか?それらをわかり易い言葉で彼らに伝え、ミッションを持たせてあげるのは経営者の仕事なんですよ。