「今度入って来た社員。前職は金融関係のバリバリの営業マンで、今度こそわが社の営業部を元気にしてくれることを期待しています」
以前ご相談をいただいたある会社の社長様から、新しく営業マンが入ってくれたと喜んでご連絡をいただきました。その会社、以前から営業力の弱さが大きな課題で、社内のデキる社員を営業部に配属してみるものの、「自分にはできません」と辞退する人が後を絶たず相変わらず困っていらっしゃる様子でした。社長様ご自身が“攻めの営業”でトップセールスだった経験をお持ちで、社員にも“ガンガン攻める営業”を指導されるそうですが、おとなしい社員さん達にはかなりハードルが高く、気持ちが折れて出社しなくなる人もいたとか。
一般的に、“営業”と聞くとそれだけで拒絶反応を示す人が多いのが現状です。それはなぜか?と聞いてみると、「営業というと押し売りのイメージがあるから」という答えが返ってくることがよくあります。しつこく押し付け、強引に売る、そして嫌われる…というイメージのようです。最近では「全社あげて営業体制を!」などと社員にハッパをかける経営者も少なくありませんが、その真意がうまく伝わらず、「自分は営業で入ったワケではないのに、何かノルマを課せられるのでは…」とか、「現場の仕事で手一杯なのにこれ以上何か売って来いと言うのか…?」などと社員に見えないプレッシャーを与えてしまって逆効果になっていることころも少なくないようです。
ひと昔前、営業現場といえば大きな売上目標がデカデカと掲げられ、ノルマを達成した優績者はその名前を誇らしげに貼り出してもらい、デキない社員は会議で吊し上げられるという光景が日常的でした。営業とは数字を出してなんぼ…と、叱咤激励したりされたりした経験をお持ちの方も多いと思います。経営者からすれば、売上が無ければ会社は潰れる、売上が上がってこそ社員の給料が払えるし、売上を上げるのは営業の仕事、だから何でもいいから売ってこい…となるのでしょうが、このやり方には限界があるのです。何故なら、そこには顧客の声や困り事、相手が果たしたい目的やその解決方法などが置き去りにされている現実があるからです。顧客に喜んでもらえない営業は決して長く続かないし、相手の役に立たない営業に“次”はないのです。欲しくも無いものを押し付け、しつこく迫って買わせる行為はただの押し売り以外の何ものでもなく、決して営業とは呼びません。これでは会社の成長どころか存続さえもあやしいものになってしまいます。
押し売りは自分基準、本物の営業は相手基準です。営業とは、お客の立場になり切って相手の目的達成の手段となることなのです。
私がご指導させていただく企業様では、全くの素人でも即営業に出られるような体制づくりをしています。なぜそれができるのか?と言えば、お客様の役に立ち喜ばれるための“手段”を明確にするからです。それをリアルに伝えられるからこそ、経験の無い社員でも堂々とお客様を訪問することができるのです。相手の役に立ち、感謝される仕事を嫌がる社員は一人もいません。
自分達の会社が他社の力となり、自分達の仕事が他者の未来を創る。過去の経験や実績が相手の成功のヒントとなり、これまでの失敗の積み重ねが他人の勇気となる。そんな気持ちで相手の手段になりきろうとする時、意識の矢印は完全に相手基準となり思っている以上の力を発揮するものです。
経営者の皆さま。「売ってこい!」と大声を出さなくても、ゴリゴリの営業経験が無い社員でも堂々と胸を張って出掛けていく営業体制…ワンランク上の良いお客様と長く付き合える全社ブランディング営業体制づくり…始めてみませんか?