「売上は横ばいなのに、難しい仕事や手間の掛かる仕事ばかりが増えて効率が悪いんです。これでは新規の開拓や社員の教育に割く時間がない。でも、今の売上は死守しなければならないし・・・」
先日お会いしたある営業部長様からのご相談です。
最近は、顧客に求められる「仕事の質」のハードルはどんどん高くなり、より良いサービスを心掛ければそれだけ手を取られ、慣れない作業に一生懸命手間ひまを掛けたとしても高い金額を請求できるものでもなく・・・。顧客と販売数量を確保することばかりを考えていると、いつしかそれに追われる毎日になってしまいます。
しかし、3年後、5年後の自社の姿を想像した時に、今やるべきことは本当にそれだけで良いのでしょうか?
私が経営者の皆さまのお手伝いをする時に伝えていることの一つに、
「3段階の目標設定とそれぞれの逆算式」という考え方があります。3段階の目標設定とは?
・・・例えば、商品の価格帯で言えば、「松」「竹」「梅」の3種類を用意し、真ん中どころの「竹」に落とし込む手法、というのが一般的ですが、目標設定を3段階で考えるとはどういうことなのでしょうか?私はこのように考えています。
企業が掲げる中期目標の、今年度達成すべき姿を「梅」と考える。では「竹」「松」は何か?というと「できればこうありたい姿」ともう一つは「叶わないかもしれないけどなりたい姿」です。そんなに考えるのは難しいでしょう・・・とよく言われますが、これを考えていかなければ決して今の枠を超えた姿が実現することは無いからです。
私のところにご相談にいらっしゃる皆さまの経営計画を拝見して思うことは、次年度以降の目標が「少し頑張ったら達成できる姿」に設定されているケースが多いということです。
もちろん、何の根拠も無い空想や妄想を目標に掲げるのは問題外ですが、今の事業を発展させようという視点で未来を描いていても新しい発想は浮かんできません。特に、その計画を立てたのが事業部長や営業部長などの管理者や仮に役員の方であったとしても、彼等の掲げる目標はあくまでも現在の事業を維持・発展させることの延長線上にあり、新しい発想を事業に取り込む発想というのは経営者の仕事だからです。
現状の延長で物事を捉えてしまうと、「今の問題点を解決するのが最優先・・・」「現状の持てる力を活かして何ができるか?」という発想になり、先ほどの営業部長のようなスパイラルに陥ってしまうことが間々あります。もちろん現在の事業を発展させてこそ経営は安定するのですから、必ず達成するべき目標値を「梅」と設定しておき、一方で「できればこうありたい姿」と「叶わないかもしれないけどなりたい姿」を並行して考え、社員に伝え続ける習慣をつけることで、目の前の作業に囚われてしまっている社員の意識を整理してあげることができます。そうすることにより、今やるべき"本当に大切なこと“が見えてくるのです。
ちなみに、日本人には無意識に真ん中を選ぶ人が多く、「松・竹・梅」を提示するとほとんどの人が「竹」を選ぶのだそうです。
経営者の皆さま。御社の大切な経営計画にも「松竹梅の法則」活かしてみませんか?