「営業マンの訪問先での滞在時間が長くなるよう、見た目や雑談力を磨くよう指導していますが、なかなか契約に結び付かなくてね…」
「ホームページをリニューアルして、全営業マンにはタブレットも持たせ、ウチの良さをアピールさせているつもりなのですが、何となくイマイチで…」
日頃、営業マンの育成に悩む社長様からよくいただくご相談です。社員の人間力をアップするよう指導をしているのになかなか…、また、何かモノを持たせたり形を変えたりしてはみたものの反応が今ひとつ…というお声です。「人は形を求める」とか、「まずは形から入れ」など、私達は何かと形にこだわる生き物で、特に見た目や第一印象は大事にしますが、そうかと言って目先が大きく変わったとしても全く反応が無いものも多く存在します。
同じように、営業マンが毎日使うツールやヒアリングシート、マニュアルなど、“形あるモノ”も、それが有効に活用されていなかったり、その力を発揮できていなかったりすることも多く見受けられます。一生懸命考えて作った“形”のはずなのに…なぜ一体“それ”は活かされないのでしょうか?
私が保険業界に入った頃、GNP(義理・人情・プレゼント)と呼ばれる営業スタイルが多く見かけられましたが、その後、外資の保険会社の参入等で“理論”に基づいた格好良い営業が広がってきました。当時、何の根拠も無く「社長だから」「部長だから」という理由で高額な保険を勧めることが多かった中で、「私達が抱えるリスク」や、「万一亡くなった場合の必要保障額」をきちんとデータや表などで目に見せてくれる営業スタイルは画期的でした。今でも保険に限らず様々な業界で格好良くスマートな、“魅せる営業”スタイルを多く見かけます。「なぜあなたにその商品が必要で」、「その根拠はこうだからです!」と話すその説得力は確かに素晴らしいものでしたが…。
しかし、最近ではそれも少し前の事のように感じるようになりました。それは、例えば自分自身に必要な情報はほぼネット等から仕入れることができますし、その根拠についても簡単なソフトやアプリなどを使うことで誰でも容易に知ることができるようになって来たからです。そこへ持ってきて、わざわざ来た営業マンがいくら愛想を良くしてくれても、一方的に雑談をされたり見かけだけのツールを見せられたりしても、そのメッセージは心に届きにくく、行動を変えるところまでは至らないというのが現実のところではないでしょうか。
モノが溢れ、比較対象が増えた現代の営業現場で必要とされるスキルとは何か?最終の購買決断をさせる時の決め手とは?最後に相手を動かす営業術とは…。
それは、「相手を思いやる飾らない言葉」であり、「相手の懐にズカズカと介入してまでも必ずや役に立つ!と思う強い決意」であると私は思っています。良かったらどうぞ…とか、またご縁があれば…などという他人事的なものではありません。自社が持つ最大の力を発揮し、相手の役に立たなければならないのです。そのためには、自分達が目指すべき未来の姿と顧客の信頼につながる“約束事”を明確にする必要があります。
経営者の皆さま。御社が目指す未来像は明確ですか?顧客との約束事は守れますか?営業マンが顧客の懐に介入して行く勇気はそこから生まれるものなのですよ。