先日、ある会社のベテラン社員さんとお話をしていた時のこと。
「うちの会社は一族経営で完全なトップダウン。新しいことにはどんどん挑戦して良いと言われていますが、いざ何か大きなミスが出るとその部門の所属長は降格になり、どこかに飛ばされちゃうんですよね。だからミスを出させないような無言の圧力がかかっちゃって誰も挑戦なんてしないですよ。」
と社内の不満を漏らしていました。そのような職場なので、残っているのは“言われたことだけやっていれば良い”というモチベーション低めの社員ばかり。“デキる”社員は辞めていくので、社内は益々指示待ちばかりになってしまうという悪循環なのだそうです。このような会社は意外に多いもので、仕事ができる人が上に立っている会社にこの傾向が強いような気がします。
仕事ができる上司は、自分自身の経験から「失敗を恐れず何事にも挑戦するように」と言うのですが(たぶん本心から)、いざ部下が挑戦しようとすると小さなズレが気になって細かく指導し過ぎてしまう、自分が思ったように行動できないとなぜできないのか?と言ってしまう、失敗したら自分の責任になるので絶対に失敗するなと無言の圧力をかけてしまう、本当に失敗してしまった時には責めることはするが次に活かすことはできていない…など、過ぎた管理意識が部下の成長を妨げてしまうパターンです。
ただ、上司の方は悪気なくやっているケースも多く、部下に(自分と同じように)うまくやって欲しいという気持ちから行き過ぎた指導をし、自分の指導が至らなかったせいで失敗したと言われたくないために失敗を許さない気持ちが働き、その気持ちが強い故に失敗した時には猛烈に責めてしまう…ということのようです。これを繰り返すことで、社内には「挑戦することを諦め、指示を待つ社員」が増え、当然社員が育たない環境になってしまいます。
しかし、考えてみてください。
昨年からのコロナ騒動で私たちの経営環境は目まぐるしく変化しています。これまでの常識が通用しないどころか、昨日のルールが今日にはまた変更になっている…という毎日が続いている中で、上司からの指示を待つだけの人材を雇う余裕のある会社がいったいどれだけあるでしょうか?自分の頭で考え、判断し、行動できる人間を育成していく他に会社が生き残る道はあるのでしょうか?
私には2人の子どもがいますが、彼等にはなるべく早いうちから自立して生活し、自分で稼ぐことを覚えるように言ってきました。もちろん学校の勉強は大切だし、学歴や資格も大事だけど、これからはそれだけでは食べていけない時代。自分の頭で考えて、自分の食い扶持くらいは自分で稼げる人間でないと困るよ、と。そのためには色々な人と交流してその中で新しいことにもどんどん挑戦して、若いうちにたくさんの失敗を経験するように言って育ててきました。そんなわが家流の子育て論は、企業の若手社員の育成に活かしていますし、とても喜んでいただいているコンテンツの一つです。
少し話がそれましたが、社員が自分の頭で考えて行動できる自律型人材が育つ環境づくりは、会社にとって重要且つ緊急のテーマです。それには、管理者の意識改革と若手社員の教育が必須です。どちらかと言うと、頭が柔らかく不要な固定観念の少ない若手社員の教育よりも、過去の栄光やこれまでのやり方・考え方が刷り込まれた管理者の意識改革が数倍、いや数十倍大変です。
そのために、社内でもすぐに取り組める方法の一つとして、
「社内の慣例を見直す」
があります。
パターン化した“いつもの”朝礼や会議のやり方をガラリと変えるだけでも社内の雰囲気は大きく違ってきます。皆様の会社の朝礼や会議は、もはや儀式のようになっていませんか?いつも同じ人がいつものように発言し、これと言った盛り上がりもなく終わっていく…。
例えば、朝礼では大きな声であいさつをすることから始めるようにオススメしています。また、会議では事前にテーマを設けて一人一人が意見を持ち寄り、活発に意見交換ができる場づくりをする。形ばかりの「理念の唱和」は止めにして、新たなサービスや会社の未来についてアイディアを出し合うなど、頭を使って気持ちを前に進めるような行動を取り入れることによって、気持ちに変化が生まれます。
社内の行き過ぎた管理体制は、意外と社長の耳には入って来ないもの。
管理者がしっかりしている会社ほど、もしかすると若手が育たない環境になってしまっている可能性大です。
経営者の皆様。
新入社員が入っても続かない…
せっかく優秀な社員が入ってもすぐに辞めてしまう…
大人しい指示待ち社員が多い…
そのような傾向があれば要注意です。
ぜひ一度若手社員と話をしてみてください。
若い力は未来の会社を支えてくれる大切な人財なんですよ。