「飛行機の便数が減って仕事が無くなったCAさん達が別の会社に出向しているらしい」
というニュースを聞いて皆さんはどうお感じになったでしょうか?
「あんなに華やかな世界にいた人が、他の仕事なんてできるのかしら?」とか、「作業的な仕事なんてプライドがじゃまをしてできっこないんじゃないの?」などと思う人もいたでしょう。当の本人たちがどんな気持ちで出向しているのか、私には知る由もありませんが、現実問題として、飛行機の運航便数が激減する中で様々な取り組みを前向きに考えていかなければならないのは事実です。私はこの1年半の間、以前とほぼ変わらないペースで交通機関を使ってきましたが、かなり便数が減った上に乗客数も限定的で、この業界の厳しさを肌で感じている一人です。
約3万5,000人の社員を抱えるJALグループでは1日あたり約1,700人がコールセンターやホテル・自治体などの出向先で業務をしているといいます。やはり中には、この仕事に憧れてようやく難関を突破して入社したにも関わらず「なぜ空を飛べないのか」と落ち込む社員もいるそうですが、一方で、これまで味わったことのない自宅でのテレワークに戸惑いながらも、「出向をして違う経験を積むことは自分のスキルアップにつながるし、出張が無くなった分、家族と過ごす時間が増えた」と前向きに捉える社員もいるようです。この業界がもとの状況に戻るのに、国内線で2年、国際線では3年くらいはかかるのでは?と言われていますので、まだまだこの現実と向き合わなければならない状態が続くことは間違いなく、いかに柔軟に思考や態度を変化できるか?が企業も個人も生き残りの分岐点と言えるようです。
そしてこれは、航空業界に限った話ではなく、接客サービスや直接訪問営業など、これまでのやり方を継続することが難しくなった業界や、それによって無人化・非接触化が進む業界、オンライン化・IT化など利便性の向上で競い合う業界なども同じように未来の戦い方を考えなければなりません。実際に、今まで通りの営業活動ができないため、目先の売上が思うようにつくれないと悩む企業も少なくありません。売上(契約数)は営業活動に比例し、その活動量は訪問件数や商談件数に比例する…という、これまでの考え方から抜け切れないままでいるとかなり厳しいかもしれませんね。分母の数さえ増やせば、後は確率論だから…という考え方も無くはないですが、今後の営業活動の中ではその思考回路を大きく変化させていかなければかなり厳しい戦いになることは目に見えています。特に、大企業のように「数」や「価格」「効率」「品質」で圧倒的な勝負ができない中小企業は、自社が何で戦うのか?その絶対的な特徴は何なのか?を今一度見つめ直す必要があります。
ここで一つ、面白いサービスを開発した企業のお話をご紹介します。現在、法人営業のご支援をしている北海道の会社で、ラジオ番組のコーナーを一緒に運営してくださっている「リクライブ」です。
中小企業がライブで会社説明会ができるサービスを3年前から開発し、それぞれの分野に詳しい専門のライブジョッキーと一緒に番組をつくり上げながら「その会社らしさ」を伝えることを可能にしたのですが、彼等といつも話していることは、「応募してくる求職者の数を増やすことではなくて、本当にその会社に興味を持って来てくれる人を増やす努力をしなければならない」ということです。名前が知られていない会社、世間的に何をしているのか分かりにくい会社、「入ってさえくれれば良い会社なんだけどな~」と日頃から口にしている会社などは、いくらたくさんの応募者が集まったところで、その人達に会社の魅力を伝えることができなければ、結局、条件面や表面的なことだけで判断されて、そしてそれは、入社後のミスマッチや早期退職に繋がりかねないからです。ここで大事になってくるのは、応募者の総数ではなく、「興味を持ってくれる人の数」です。
そのために、今までの会社紹介ではあり得なかったライブ配信にこだわって、社長や人事担当者のみならず、先輩社員も生出演!本当は見せたくない社内の散らかっている場所や重労働の場面などもオープンにしてもらうのです。それによって、一時的に応募者数は減るかもしれませんが、理想だけを語って入社後に早期退職されるよりもお互いにとって幸せな採用につながるからです。反対に、社長が「生で」「本音で語る」メッセージは求職者の胸に確実に届き、「入社前からファンになる」ことを可能にしているのです。
これは、営業(特にオンライン営業)でも同じことが言えます。テレアポの件数とか、商談数ではなく、その商品やサービスに「興味を持って商談に臨んでくれた人の数」が重要になります。訪問型の営業スタイルであれば、仮に飛び込みで初対面の相手だったとしても、何かしら世間話をしたり相手の話を聴いたりする中から手探りで会話の糸口を見つけることも可能でしたが、オンライン商談は違います。回線が繋がってお互いの顔が見えた瞬間から商談がスタートし、余分な世間話をするような雰囲気はほとんどありません。この商談の場に呼び込む前に、いかに今回のプレゼンに興味を持って(期待してもらって)いるかが重要なカギとなるのです。
さて。皆様の会社では、営業活動をどのように評価していますか?
数の原理で、とにかく分母を増やすだけの営業になっていませんか?
その過程や事前期待に重きをおいた営業戦略になっていますか?
本当に大切な数字、直視しなければならない現実は見えていますか?
今まで通りのやり方・考え方の延長線上に未来の成功の答えは無いのです。