応援コラム

第306話 モノありきの販売体制から抜け出す

 

新規開拓営業で初めて商談をする時、まずやるべきことは何でしょう。

立派な提案書をつくることでしょうか?

相手の会社を調べてそれに似た導入事例を準備することでしょうか?

それとも、自社商品のサンプルや使い方の準備?

価格(値引き)の交渉準備?

 

…これは、営業同行をする時によく出てくる話題です。

どれも大切な事前準備ですが、一番肝心なことが抜け落ちていることにお気づきでしょうか?

 

それは、「相手のことを深く理解する」ことです。

 

来週もある社長の営業に同行する予定なのですが、私なりに訪問先の会社のことを理解しようと、ホームページはもちろん、その会社紹介や社長のあいさつ動画がありましたので、それぞれ30回以上は見ましたよ、と言ったら驚かれました(笑)相手が何をしようとしていて、今、何が必要なのか?それに対して一緒にできることは無いか?自社が役に立てることは無いか?それを必死に考えることがまず第一歩で、それ無しに提案書の準備をしていては、ただのモノ売り…いや、もしかすると押し売りに近いものになってしまうかもしれません。

 

■無意識に出る「モノありき」の販売

 

これは、私の書籍の中にも書いていますが、文字通り「モノ」を売ることが真ん中にある販売のやり方、考え方です。特に良いものをつくっている会社さんほどこの傾向は強く、自社のモノがいかに良いものなのか、他社との違いは何か、そのメリットは…といった具合に、商品の良さをアピールしようとするのです。

 

以前、このような会社がありました。

 

「うちの化粧品には〇〇の成分がたくさん入っている。他のメーカーはこれだけしか入っていない、だからうちの商品の方が優れている…」と。

 

また、このような会社もありました。

 

「うちは早いのが取り柄!納品スピードには絶対の自信がある!」と。

 

どちらも顧客にとって非常にメリットがあるように聞こえますが、では、「他社がそれを超えてきたらあなたの会社はどうしますか?」と質問するとどうするでしょうか。良い成分を常に他社よりも多く入れ続ける、納品スピードを常に他社と競争する…ことを続けていてもどこかに限界がきてしまいます。お互いに体力を消耗し合うこの競争は、資金力のある大手ならまだしも、私たち中小・小規模の会社は絶対に避けて通りたいものです。

 

■顧客にとっては案外必要のない「こだわり」

 

品質やスピードにこだわる先ほどのような売り方は、一見、「顧客のため」のように聞こえますが、実はお客様はそこまでのものを求めていなかったりします。言い換えると、全てのお客様があなたの会社の「こだわり」に興味があるわけではない…ということです。

 

冒頭ご紹介した、社長営業に同行する会社もこの傾向が非常に強くて、事前にプレゼン資料を見せてもらうと、その商品がいかに素晴らしいか?という説明がぎっしりと詰まっていました。

 

相手にとってみれば、似たような商品は他にいくらでもある(と思っている、実際は違うかもしれないが…)し、そんなことよりも、なぜうちの会社に興味を持ったのか?や、あなたの会社の提案を受け入れるとお互いにどんな未来が期待できるのか?といったことの方が興味があるはずです。これは男女の出会いとも似ていて、初デートで自分の自慢話ばかりしてくる相手より、私のどんなところに魅力を感じてくれたのか?次はどんなデートがしてみたいか?といったことを楽しそうに話してくれる方が嬉しかったりします。

 

単純に何かモノをひとつ買って欲しい…という商談なら別ですが、会社と会社が取引をはじめようかどうか?という商談の場であれば、もう少し高い位置からお互いを俯瞰して見る視点が必要です。

 

■誰が売りにきているのか?

 

つい先日、海外でビジネスをされている日本人経営者の方とお会いしたのですが、海外でビジネスをする上で最も大切なものは?と聞くと、人とのつながりだとおっしゃっていました。日本のような「学歴」「実績」なんかは全く関係なく、その人が何者で、どんな考えを持っているのか?どんな想いでここへやってきたのか?という、正に「その人そのもの」でしかないと。

 

これには私も大変共感しました。私もベトナムでビジネスをしていて、どこの大学だったかとか、どこで働いていたか、今の仕事の実績は?なんて聞かれたことはただの一度もありません。それよりも、ベトナムは好きですか?どんなところが好きですか?あなたはベトナムで何がしたいですか?と皆さん聞いてくれます。一緒に飲んで笑って会話して、そんな中でお互いを理解し合い、一緒に歩んでいける道を模索する…そんな感じです。海外では、人とのつながりが一番大事、そこでの信頼が無いと何も始まらないがひとたび始まるとスピード感が日本とはまるで違う…そんな風に感じています。

 

日本の商売も昔はそうだったのかもしれませんが、いつの間にかスピードやスペックなど味気の無いものになってしまったように思います。会社や商品の話はできても、自分の想いや人となりについて語れない社長が増えてしまったのではないか…と。

 

社長のその後ろ姿、社員がいつも見ています。そろそろ「モノを売る」発想から抜け出しませんか?

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