「あと20年、いや30年、一生現役で頑張りたいという気持ちになりました!」
35歳という若さで会社を立ち上げ、経営者として事業を営んで15年。今年50歳を迎えた社長様のお言葉です。現在の会社は、当初全くゼロからのスタートで、事業計画や資金の調達から、事務所の物件交渉や什器の手配、そしてもちろん新規顧客の開拓、社員の教育、労務管理まで全てが自分の仕事でした・・・と、大変なご苦労をなさったようです。世間では起業して1年以内に50パーセント、3年以内に90パーセントが倒産すると言われますが、それだけ事業を軌道に乗せることは非常に難しく、膨大なエネルギーと的確な舵取りが必要とされますが、この社長様もやはり初めの3年間は昼も夜も日曜も正月もなく働いたそうです。
しかし、事業は立ち上げに一番苦労をする反面、それを乗り越えある程度軌道に乗り出すと急加速的に伸びる時期がやってきたりしますが、この社長様の場合も5年目・10年目の節目に迎えた大きな転換期をうまくチャンスに替え順調に売上を伸ばして来られ、ここ数年は飛躍的な伸びは無いものの大きなマイナス要因も無く経営は安定していたそうです。もちろん、長期に安定的な経営を続けて来られた影には人知れぬご努力があったことは言わずもがなですが、実はその社長様には安定しているからこその悩みがあったのです。
全従業員10名ほどの会社ですが、地元でも有名な大手企業の顧客も多く、傍目にみれば何の悩みも無いように見えましたが、初めてお会いした時にはこうおっしゃっていました。
「この仕事はそう長く続けようとは思っていません・・・」
15年前には、売上を上げて利益を積み上げ、規模を拡大していくことが大きな目標で、積極的にM&Aなども仕掛けて来たそうですが、最近は、大きく増えた既存顧客の対応に追われ、新たな発想や未来への取り組みに割く時間が無く、日々何のために働き誰のために仕事をしているのか分からなくなってきてしまった・・・そんなご様子でした。
物には必ず寿命があるのと同じで、どんな事業にも寿命がやってきます。ある一定の時期が過ぎた時に、あれ?何となく今までのスタイルが合わないな?ということに気付く時が来ます。どんなに流行の最先端の商品も、どんなに人々が感動したサービスも、時間の流れと共に過去のものになってしまい、私達人間は常に目新しいものを求めてしまうのです。
何か新しい事業やサービスを考えなければならないのか?今の状況をどう改善すれば良いのか?この社長様も深く悩んでいらっしゃいましたが、実は聞いてみるとある大切な事実に気が付きました。今まで5年サイクルで事業を大きく伸ばしてこられたこの会社、この5年の間に次のステップに繋がるヒントがちゃんと準備されていたのです。営業が主体のこの会社では、常に顧客開拓とサービスの改善に力を入れていたため、社内には「お客様の声」という宝物が山のようにありました。その声を一つ一つ丁寧に掘り下げ、また自分達がやって来た実績とこの業界の将来性などを照らし合わせて考えていくことで、画期的な新商品を見つけることができたのです。
具体的な売上につながるにはもう少し時間がかかりそうですが、様々な方面から検証し、確実な将来性と手応えを実感した社長様の口から飛び出したのが冒頭のセリフです。
常に新たな市場を開拓し、顧客を創造していくこと、そしてその可能性にトキメクことこそが、経営者の元気の源なのかもしれませんね。