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人は「気」であり、心と体は道具にすぎない…
まずは「人間」をつくりなさい、その後が経営であり、事業である…
生命の本質とは、ひた向き・前向き・積極的に活きることである…
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これは、以前参加した中村天風先生の勉強会で教えていただいた言葉の一部です。このお正月、これまでの自分を振り返り、今年一年をどう生きようか?と考えている時に以前のノートを引っ張り出してみるとこのような言葉がぎっしりと書き留めてありました。中村天風先生と言えば、昭和の政財界に多大な影響を与えた方で有名ですが、最近では、プロスポーツ選手や若手経営者がその教えを学んでいることでまた見直されているようですね。
今週のコラムは、中村天風先生の教えの中から、今年の事業成長に役立つヒントについて考えてみたいと思います。
さて、そんな天風先生の言葉の中で私が特に印象に残っているのが、「潜在意識の使い方や通常の心のありよう」についてです。
私たちの意識には、顕在意識と潜在意識があるというのは有名ですよね。顕在意識と潜在意識は「海に浮かんだ氷山」のようなものと例えられることが多いです。海面から突き出している部分が顕在意識、海面下に隠れている大部分が潜在意識です。その割合は、顕在意識が3~10%、潜在意識は90~97%を占めていると言われており、潜在意識は=無意識で、自分ではコントロールできないと言われています。
顕在意識は自分で考え行動することが出来る意識なので、物事の良し悪しを判別したり、不安になったり、悩んだりするのも、この顕在意識が行っています。この時、思考を組み立てるための材料を潜在意識の中から取り出してくるらしいのですが、潜在意識の中には、過去の経験や、知識として知ったこと、見たり聞いたりしたこと、それによって感じた印象や思考が、本人が忘れていても記録されており、特に、“繰り返し”“繰り返し”入ってきた情報は強くインプットされているそうです。
この、“繰り返し”というのが大変クセモノで、普段何気なく言っている口ぐせや、他人から聞かされる言葉なども無意識のうちに刷り込まれてしまうのだとか…だから、消極的なことは例え思っていても口に出さないようにするべきであり、他人に対しても決してマイナスな言葉で暗示にかけるようなことはせず、自分にも他人にも「勇気づける」「積極的な」言葉をかけよう!というのが天風先生の教えです。
そんなことを考えている時に、ふと、以前私が勤めていた会社のことを思い出しました。当時、営業マンとして思うように契約が取れなかった私は、毎日朝礼で嫌味を言われ、外から帰って来ても冷たい空気、個人面談は恐怖の時間でしかなく、「資格の勉強なんてムダだ、そんな暇があったら飴ちゃんでも配って来い」という心無い上司の言葉のシャワー…そんな職場、想像がつくでしょうか?大手の会社でしたので、研修や報酬など「形」は整っていましたが、それを動かす「人」については正直、当たりはずれが大きい職場でした。日頃から、このようなことが繰り返されると、もう無意識レベルでその上司のことが嫌いになります。(少なくとも「好き」ではなくなりますよね)笑
これは少し極端な例ですが、近しい経験をお持ちの方もいらっしゃるのではないでしょうか?
例えばものづくりの会社ではどうでしょう。
「生産性向上」や「現場改善」といった言葉が飛び交っていないでしょうか?海外と比較してその低さが目立つ日本企業にとって「生産性の向上」は大きな課題です。なるべく少ない行動でより多くの結果を出そう!というのが「生産性の向上」で、これは事業を継続していく上では非常に大切なことですが、そこにみんなの意識が向くと、限られた時間をできるだけ「生産性が向上すること」に使おうという無言の圧力が発生するものです。
さらに、それを改善するためにみんなが見えるように…「可視化」「数値化」しようという思考が働きます。どれだけ向上したのか?どれだけ改善できたのか?数値で測れるものこそ、改善が可能であるという考え方が私たちの中にあるからです。そして、いつの間にか私たちはその「数値」に左右され、それを改善するための「問題点」にばかり目が向くようになります。
それと同時に、非効率な行動…例えば、考える時間や相談する時間、雑談する機会といったコミュニケーションを極力無くし、効率的なツールを活用しようとする…ということも決して珍しい光景ではないはずです。ある会社では、「会議はムダ」「研修はムダ」という考えから、集まって話をする機会がめっきり少なくなって、結局、社内のコミュニケーション不足が様々な問題を引き起こしてしまった、という話を聴いたことがあります。
どんな会社であっても、その生産性を高めるためには、行動を変えていく必要はありますが、その前の段階で、まずはお互いの信頼関係が構築されていないと何も始まりません。どれだけ素晴らしい技術を教えて、良い結果を生み出せるよう教育しようと考えたとしても、そもそも部下が何を考え、どのような行動をし、習慣を持っているのかを知らなければ正しく教えることはできないし、そこに信頼関係が無ければ本当の姿を引き出すことはできないのです。
そう考えると、営業マンの育成も、ものづくりの現場改善も、まずは日頃の人間関係から…という基本に立ち返るのかな、と思ったりします。朝のあいさつに始まって、日々の教え方や話を聴く態度、やり方・考え方の共有など、毎日の“繰り返し”が相手の印象をつくり、お互いの信頼を深めていくのです。「良い関係を構築したい」と考えて接していれば、きっとそれは現実化します。
私たちは、良い結果を出すためにまず行動を改善しよう(させよう)としますが、そもそも、なぜその行動に至っているのか、何を考え何を思っているのか、そもそもの信頼関係はどうなのか、に深く関心を寄せるべきではないでしょうか。「心理的安全な職場づくり」…2022年、皆様の事業を大きく発展させるキーワードになりそうですね。