応援コラム

モノ売り営業から抜け出せない会社が考えるべきこと

 

 

今、日本の中小企業の多くは、一定レベル以上の品質の商品やサービスを提供することができています。従業員が10名に満たないような小さな会社であっても、大企業から仕事の依頼が来ることも珍しくなく、その技術力の高さは目を見張るものがあります。

 

これまで長い間、そのための努力を続けて来られたことは本当に素晴らしいことだと思いますし、その力は誇れるものでありますが、しかし、その確かな技術力や商品・サービスに対する絶対の自信が、今後の利益(価格)に大きく影響を与えるとしたら?…今のうちに真剣に考えておく必要があります。

 

ものづくりの会社に限らず、タテに組織をつくって来たこれまでのやり方は、役割分担は見事にできますが、横のつながりが薄く情報や認識の共有がうまくできないという不具合も生じます。良い商品をつくろうと思えば思うほど、作り手は作ることに一生懸命になり、それを検査する部隊、数字を管理する部隊、お客様を訪問して販売する部隊…とその仕事に特化した人間をつくってしまいます。

 

結果、年間の計画や目標もそれぞれに細かく設定され、自分の部署の目標達成が最優先でそれ以外の部署にはあまり興味がない(むしろ同じ社内なのに軋轢が生じてしまっている会社も…)という状態を招いてしまいます。

 

ここで問題なのは、社員同士の仲が悪くなるとか社員のモチベーションが下がるとか、そういったことではなく、「価値をつけて売る」チャンスを損なってしまっていることです。本当なら1万円で売れるものを3,000円とか(もしくはそれ以下)で売ってしまっている可能性があるのです。

 

これは私の地元のある小さな食品製造会社でのお話です。

はんぺんなどの練りものをつくっているその会社が、これまでの販売ルート(地元の学校や卸しなどBtoBが主体)から個人向けの販売に間口を広げようとした時のこと。

 

それまで、学校給食や普段食べているお惣菜に使われていたので地元の人なら小さい頃から一度は口にしていたはずなのですが、「どこでつくっているはんぺんなのか?」誰も知らない…製造している会社の名前を聞いても誰もピンと来ない…そんな状態で地元のスーパーに売り込みに行っても誰も相手にしてくれなかったそうです。しかもお値段も少し高めだったため、当初は全く売れなかったそうです。

 

そこで、地道に試食をしてもらったり地元のイベントに出展したりしながら、自分たちがそのはんぺんをどうやって作っているのか?丁寧に伝えて歩いたそうです。機械みたいに一度に大量につくれないけど、その分、味には自信がある(材料にこだわり、手作りにこだわり、余計な添加物を一切入れていないため日持ちもしない)でも、自分たちが思う最高のはんぺんを一生懸命つくっているのだということを必死に伝えていくうちに、百貨店や高級スーパーなど、価格よりも味を大切にするお店から注文が入るようになったそうです。

 

味を売りにしている高級な店で買い物をしたことがある人はイメージできると思いますが、その店に並んでいるということは、イコール「味に自信があるものだ」とお客様は判断します。同時に、もしも食べてみて美味しくなかったらお店全体の信用を失うことになりますので、中途半端な商品は並べません。そのような、きちんと価値がわかる人に丁寧に伝えていくことは、価格に囚われない理想的な営業活動と言えるでしょう。このはんぺん屋さんは見事にその理想的な営業活動を実行したのです。

 

さて、会社の組織が分断されていると、「価値をつけて売る」チャンスを損なってしまいますよ…という話に戻りますが、先ほどのはんぺん屋さんは家族経営の小さな工場。作り手も売り手も家族なので、お互いの様子は全てわかっているので、営業に歩く人間(娘さん)が出来上がったはんぺん(完成品)の価値を愛情を持って丁寧に説明することができましたが、ある程度の規模の組織を持つ会社になると事情が変わってきます。入社した途端に〇〇部署に配属され、その部署の仕事だけを毎日こなしながら年月を重ね、会社のことは分かっている“つもり”の社員に育っていくけれど実はわかっているのは全体のうちのほんの一部分だったりします。

 

なぜ、その会社が長い間地元のお客様から愛されているのか?

なぜ、効率の悪い製造方法にこだわっているのか?

なぜ、他より価格が高いのか?

 

その理由を知らない社員や、興味・関心を持たない社員が増えていく中で、本当の自社の価値を理解できず、売れないのは価格が高いせいだと単純に考えてしまう者が出てきてしまうのです。

 

付加価値を高めたいと考えたとき、その資源として活用できるものの一つが「時間」や「手間ひま」です。「創業から年数が長い」とか「歴史がある」「ロングセラー商品がある」などは、それだけ長く愛されている会社であるという信用につながるし、「いくつもの工程を経て手間ひまかけた商品」や、「何十年も寝かせた商品」などもその価値をアピールできる概念です。この付加価値の部分をしっかりと伝えて、会社や商品に対する信頼や安心感を得ることがとても重要なのです。

 

皆様の会社では、出来上がった商品という「自社の価値」の一部分だけを切り取って安く販売していませんか?

これまでの歴史やこだわり・手間ひまはきちんと価格に反映していますか?

販売する社員たちはその価値を理解できていますか?

 

価値を伝えて適正な価格で販売できる土台をつくるのは経営者の役割ですよ。

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