応援コラム

“一点突破”、まずは勝てる商品をつくる

仕事柄、創業したての社長や新規事業を始めて間もない会社から営業方法についてご相談をいただくことがありますが、多くの人がついついハマってしまいがちなのが、「一日でも早く売上を上げたいので、広く、たくさん告知(広告)をしなきゃ…」という心理です。

以前、よろず支援拠点のコーディネーターを務めていた時に一番多かったご相談が「集客」。当時は自分で事業を興す人が非常に多く、しかも助成金を活用できることなども手伝って、積極的にSNSやWEBの広告を活用する人も少なくありませんでした。しかし、そのほとんどが成果を出せずに悩んでいて、資金ももうすぐ底をつくので、とにかく早く売上を作るにはどうすれば良いか…と焦る社長が多かったように記憶しています。

また、創業したての社長に限らず、本業が軌道に乗っているからこそ新規事業に参入する…という社長も少なくありません。その場合、資金的にはある程度の余裕がありますが、それでも無限大ではありません。加えて、立ち上げの経験が浅い人間が関わっていたり、その分野での実績がゼロからのスタートであったりなど、本業とは違う厳しい現実をあまく見積もってしまっていることから道に迷ってしまう、というケースもあるようです。中には、一気に知名度を上げるために有名なインフルエンサーを使って数千万円規模の広告費を使ったり、社内に不足する営業リソースを補うために外部に丸投げしてしまったり…と、初めの段階で多額の資金を使ってしまっていた会社もあります。

これらに共通する問題は何かと言えば、「広く、まんべんなく」とか、「数打ちゃ当たる」的な発想と、告知したものをきちんと刈り取れるだけの「商品力」や「実力」のバランスです。

まず、私たちが考えなければならないのが、新参者が後発で参入する際のハードルの高さです。

世の中のニーズが既にあるもので勝負を挑むのであれば、当然、競合がたくさん存在し、その中で勝ち残れるだけの商品力と実力が必要になりますし、まだ誰も知らない商品やサービスで勝負に出るのであれば、まずはその大切さや魅力を世間に知ってもらう…という啓蒙活動的なことにリソースを割かなければなりません。いずれにしても何かしらの“体力”が求められる大変な戦いですね。

しかし、この考え方は新規事業に限らず、営業マンレベルで考えても普通に必要です。競合がうようよいるところに飛び込んでいくのか?敵は誰もいないけれど、その分、誰も必要だと思ってくれていないところで戦うか…。

私が損保で法人営業をしていた頃、特に力を入れていたのは火災保険でした。事務所や工場がある会社(自社物件でも賃貸でも)であれば100%に近い会社が加入しているのが火災保険、正に前者の「競合がうようよ」の世界です。そこに切り込んでいくためには、何か他社とは違うキラリと光るものを持っている必要がありました。経験を重ねることで専門的な知識や実績はついてきましたが、最初はもちろんありません。私が唯一持ち合わせていたのは、「正しい保険加入を勧める」というプロとしての使命感のようなものだけです。

「保険はなるべく少なくしたい」

「もっと保険料を削減したい」

と考えているお客様に対して、正しく保険に加入しましょう!とご提案するので、結果、保険料が既存の契約の2倍、3倍になることもありました。しかし、きちんと納得してくだされば、結局、大事なのは「保険料」ではなかったと理解してもらえたのです。皆が入っている保険だからこそ、誰もが適当に販売している商品でもありましたので、証券を見ると驚くほどいい加減な内容で加入しているケースも少なくありませんでした。これでは本当にいざという時に役に立たない…これまではたまたま運が良かっただけ…というようなお客様が1社や2社ではなかったのです。多くの広告費や時間を掛けることができない営業マンだからこそ、必要だったのは「何のために販売するのか?」という使命感を明確にすることでした。

冒頭のよろず支援拠点でのご相談でも、確実に成果を出していた経営者は、自社の強みやその事業をやることへの想いを明確にして、それが必要な相手にきちんと届けることができていた人です。小さな美容院を営む女性経営者は、とにかく歩いて来られる範囲へのポスティングを自ら行い、それを定期的に続けることで確実にファンを増やしていましたし、ある会社では、新商品を販売するにあたってDMを出すリストを購入するお金がない…というころからのスタートでしたので、まずは社長の年賀状を引っ張り出してリスト化し、続いて社員がこれまで交換した名刺を集めてきて、こちらもリスト化。とにかく自分たちの顔を知っていて、想いが伝わりやすい人から案内していこう…とスタートして確実に成果を出していました。

創業したての会社はもちろんですが、新たな事業を立ち上げる時にも必要なのは、まずは「勝てる商品」をつくることです。勝てる商品とは、圧倒的な性能とか格安な価格のことではありません。それをつくったきっかけやプロとしての使命感など、「何のために」という理念を盛り込むことで魅力的な商品になり、それに共感してくれるお客様との出会いを可能にしてくれるのです。自分の身近な1人にも理解してもらえないものを、多額の広告費を使って広くばらまいたところで、誰にも伝わりません。

早く、多くの売上を…
もっと広くたくさんの人に…

と焦る気持ちは、その実現を益々遠ざけてしまいます。
そのような時だからこそ、「何のために」その事業をやっているのか?棚卸ししてみませんか?

自社のストーリーを活かす営業戦略について、ご興味のある方はぜひセミナーにご参加ください。

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