応援コラム

第283話 生き残りをかけた「第三案」は社内で生まれるのか?

 

「なかなかお客様と直接お会いすることができず、新規開拓に苦労しています。」

 

先日、ある懇親会でご一緒した社長がふとおっしゃった言葉です。

 

BtoB営業の会社で、以前はテレアポや飛び込みで新規開拓をすることを得意としていらっしゃったそうですが、この数年間は直接訪問できるアポがなかなか取れず、いいとこ、メールや郵送での資料請求止まりになっているのだとか。その後、フォローの電話を入れたりオンラインでの商談にこぎつけたとしても成約までの道のりは遠く、「コロナを理由に断られやすくなったんでしょうね…」ともおっしゃっていました。競合の会社では、営業を外部に委託したり通販にシフトしたりして営業社員の数を減らしたところもあるらしいのですが、その社長は「これまでうちで頑張ってくれた社員だから何とか大切にしたい…」とお考えのようです。

 

しかし、時間が経つのは本当に早くて、あっという間にひと月が過ぎ、思うように売上が上がらない一方で、確実に出ていく固定費…という現実もあります。当然、今のままではダメで何かやり方を変えていく必要があるだろうし、変えたからといって直ぐに効果が出るわけでもないだろうし、「だからこそ信念を持ってやり続けられる新たな案を出していくことが大事なんですよね」…そうおっしゃったのがとても印象に残りました。

 

私が普段、多くの会社の“価値”の棚卸しを一緒にやっていると必ずと言っていいほど出てくるのが、「今の社員がいてくれたおかげで…」という社長の言葉です。事業を長く続けていると、決して良いことばかりはありません。むしろ辛い出来事や苦しい出来事の方が多いのかもしれません。しかし、その度に一緒に乗り越えてくれた社員がいたということを思い出す社長が多い証拠です。この社長も、共にここまできてくれた社員を大切にしたい、とお考えなのだと思います。

 

以前このコラムでもご紹介しましたが、小さな綿屋さんから始まって、今や150名の社員を抱え140年以上続く老舗になられた会社がありますが、そんな素晴らしい会社も、途中、工場が火事で焼失したり経営の危機があったりしたそうで、決して順風満帆ではなかったとお聞きしました。会社は生き物だといわれますが、正に、経営環境の変化に対応できたからこそ「今」があるわけで、対応できないと生き残れないという厳しい現実はこれから先も続きます。

 

いつも私が思うことは、「今の社員がいてくれたおかげで…」とか、「あの人との出会いがなければ…」「あの時にあのひと言が無かったら…」という社長のセリフはたくさん耳にしてきた半面、「この商品があったおかげで」「あの機械があったからこそ」という言葉はあまり聞く機会が無く、やはり会社の真ん中にあるのは「人」なんだな、ということです。会社というよりも、社長を支えてくれていると言った方がいいかもしれません。

 

会社が生き物である以上、一寸先は未知の世界です。明日、倒産するかもしれない可能性を誰もが持っていることになります。そんな不安いっぱいの会社に自分の人生を懸けてみようと思ってくれる社員がいてくれることが、やはり社長にとっては非常にありがたいことなのだな、と感じさせられます。転職が珍しくない時代になったとはいうものの、それでも自分の人生の大切な時間を使って会社の成長にコミットしたり、困難を一緒に乗り越えたりしてくれる社員がいてくれるからこそ、事業を続けることができるのです。

 

そんなかけがえのない社員を持つ社長が考えるべきことは、「社員が持つ力が発揮できる場をつくること」だと私は思っています。

 

例えば、冒頭の社長の会社であれば「直接商談ができれば自社の強みを伝えられる頼もしい営業マン」たちがいるのですから、彼らにその商談の場をつくってあげることです。現場でお客様のニーズに合わせて柔軟な対応を心がけるのは「営業マン」の仕事かもしれませんが、社会の変化に対応できる営業環境を整えることは「会社」の仕事だからです。こんな会社であればぜひ会って話を聞いてみたい、こんな商品なら直接見て、触れて、話を聞いてみたいと思ってもらえる会社にしていくこと=ブランディングは、今後、社長が考えるべき大きなテーマだと思っています。以前のようなテレアポ&飛び込み営業スタイルがオンラインに変わったということは、人通りの多い商店街の店頭で呼び込みするスタイルをネット通販に切り替えた…くらいの違いがあるからです。

 

コロナの初期の頃のように、「今だけ」「仕方なく」オンラインなのではなく、オンラインで済む用事がたくさんあることにお互いが気づき、会わなくて(行かなくて)も良いことはなるべくそれで済ませようとお互いが考えるようになったことで、「会わないこと」がデフォルトになったと考えた方が良いかもしれません。これまでのように、店頭で呼び込みができたのであれば、全く興味のないお客様をその気にさせることは可能だったかもしれませんが、それが通販になったら話は全く違ってきます。商品に興味を持ってもらうための説明や会社の良さを伝えるページが作られたサイトがあってこそ初めて、それが多くの人の目に触れて、検討してもらえる…という土俵に上れるのです。

 

この営業環境の変化について、社長や部長が方針を決めて下におろす…というやり方もあるでしょうが、皆様の会社でぜひやっていただきたいのは、お互いの意見や考えを出し合って「第三案」を模索することです。機械やロボットは「1+1=2」のような計算はもの凄く早いですが、われわれ人間には、「こんなのどうかしら?!」という、1+1が5にも10にも化けるアイディアを出す力があるのですから。「信念を持ってやり続けられる新たな案」は、お互いを認め、尊重し合うからこそ生まれます。環境の変化を成長の機会に変えるチャンスです。まずは社内で自由に意見を出し合う機会を設けてみてください。もしも場づくりにお困りの時はお気軽にお声掛けくださいね。お手伝いいたします。

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