応援コラム

第308話 「魚を与えるのではなく、魚の釣り方を教えよ」だけで良いのか?

 

今週はベトナム・ハノイで仕事をしています。相変わらず活気に溢れ、いつ来ても元気がもらえる街の空気に感動しますね。このエネルギーを定期的にチャージするのも私の大きな目的のひとつですが、今回は、自社商品をベトナムで展開したいと考える会社の社長と市場調査&採用面接の同行がメインです。

 

最近は、海外で自社の商品やサービスを販売したいという社長のご相談も増えていますが、その時に、日本国内にいながら、日本の常識を基に考えてしまうと大きなミスにつながるな~と感じます。日本での実績や知名度がそのまま通用するような錯覚に陥るからです。以前同行したことがある会社様も、国内での販売実績や品質は素晴らしく、それがきちんと伝わればきっと素晴らしい結果が期待できるだろうと思いたいところでしたが、一番肝心なことは「相手にきちんと伝わる」こと…そこのハードルが思った以上に高いな、と感じましたので、今回のコラムはそれについて書いてみたいと思います。

 

■公式・ノウハウ・テクニックに偏重しすぎていないか?

 

「魚を与えるのではなく、魚の釣り方を教えよ」という言葉を聞いたことがある方は多いと思います。魚を与えればその場の飢えはしのげるけれど、しかし、翌日も同じ状態になるので、釣り方を教えればその後もずっと食べていける…というような意味で使われていると思います。

 

私も以前このように感じた時期がありました。離婚してお金が無い状態で2人の子どもを育てていかなければならなかった時、様々な手当てや税金の免除などの制度は大変ありがたいが、自分自身の手で稼いで食べていけるようになりたいと強く感じたのです。当時は、とにかく勉強をして資格を取ったり、ビジネスのやり方・考え方について学んだりすることに必死で、ただ、そのおかげで何とか自立することができましたが、次のステージに向かおうと思った時にふと疑問を感じるようになりました。

 

新たなビジネスや新たな市場開拓、新たな営業手法…などの課題に直面した時に、どこかに「正解」があるのではないか?と期待してしまう自分自身がいることに気づいたのです。魚の釣り方ばかりを教わってきた過去の習慣がそうさせているのでしょう、「新たなこと、未経験のことだからこそ、そのノウハウを勉強することが第一歩」なのだと考えてしまうのです。

 

■「1+1=2」…事業のやり方にも正解があると勘違い?!

 

その昔。

 

新たに事業を始めた時や新商品を開発した時、社長自らがその商品を手に持って、一軒一軒訪問して、その魅力や素晴らしさを伝えながら市場をつくってきた…という経験をお持ちの方も少なくないと思います。弊社もそうでした。コンサルティングという目に見えないサービスと、何の実績も無い自分自身を信頼して契約してくれる社長を探して歩いて、ようやく少しずつ仕事につなげてきました。

 

この新規開拓。日本にいて、言葉も習慣も同じ日本人同士でもなかなか難しく、一足飛びにはいかないことをよくわかっていたはずなのですが、いつの間にかその大変さを忘れてしまって、「何かうまくいく方法があるに違いない、効率よく売上を上げるやり方があるはずだ」と考え、その方法やノウハウを知ろうとしたり、教えてくれる人を探そうとしたりしてしまう社長が一定の割合でいます。

 

以前、同行した会社の社長も正にそのタイプで、「どうすれば最短で売上を上げられるか?」「どうすれば効率よく集客できるか?」「誰と組むのが正解なのか?」「どうすれば…どうすれば…」と、何かクイズの答えでも探すかのように、方々にヒントを求めて歩こうとされていました。

 

しかし、冷静に考えればわかることですが、事業がうまくいくかどうか?に正解などあろうはずがありません。

 

先ほどのような社長は、傍目にはそれらしいことを言う「やり手の経営者」のように映りますが、その実、どこかの誰かにヒントや正解を求めて歩いているだけ…だったりします。

 

■「釣り方」ではなく、「釣りそのもの」を思い出す

 

例えば、〇〇の商品なら通信販売が良いとか、△△のエリアならこの販売手法が効率が良いとか、□□のやり方では顧客情報が取れないからダメ…といった目先のやり方に囚われていると、本当に大切なことを見失ってしまいます。冒頭の魚の釣り方ではありませんが、ノウハウやテクニックに偏重しすぎると魚釣り本来の目的を見失ってしまうのです。特に、日本国内で成功した会社、売れている商品を海外に持って行こうとする時は注意が必要です。

 

自社はこれだけの歴史や実績がある、この商品の品質には絶対の自信がある…という過去の成功がじゃまをして、本来の目的…自社のことを知ってもらう、商品を好きになってもらう、信頼してもらえる会社・人・商品であることをきちんと伝える…ということが置き去りになってしまうのです。

 

日本での成功、過去の実績、多くの既存顧客などは自社にとって大切な宝物であり、貴重な資産ですが、それを過信してしまうことで一番大切な「相手に対する視点」を忘れてしまうのです。

 

国が違えば言葉も価値観も食べ物も違います。もちろん商習慣も違いますのでそれに沿ったノウハウやテクニックも必要ですが、まずは相手を知り、自分(自社)を知ってもらって互いの信頼関係を構築することが全ての第一歩。海外とのビジネスをお考えの社長、まずは自分の目で見て肌で感じて、そして言葉がわからなくても心で通じ合える関係づくりから始めませんか。

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