応援コラム

自社のブランドについて考えるタイミングと考え方

 

今から30年ほど前に起業し、現在は複数の事業に拡大しているという、ある社長とお話する機会がありました。若い頃から好奇心が強く、様々なことに挑戦して来られたというその社長は、人並み外れた行動力が成功の秘訣のようですが、その分、うまくいかなかったことも数多くあったそうです。そんな魅力的な社長。一つの事業でスタートし、取引先もそう多くなかった頃は、その人柄に惹かれて…という、言わば社長のファンが周りに多かったので事業もやりやすかったそうですが、規模が拡大してくるとそういう取り巻きだけではなくなったため、古くからの“ファン”の中には、

 

「最近の社長は何を考えているのか分からない。」

「どこに向かおうとしているんだろう?」

 

…という声も聞かれるようになったそうです。

 

確かに、規模が大きくなればなるほど、関わる人が多くなって、その分だけ社長が頭の中で考えていることは伝わりにくくなるものです。ましてや、その社長のようなカリスマ経営者は、かなりのスピード感を持って事業を展開していくため、周囲には理解が得られにくいという点は大いにあります。

 

そんな社長が今注力されていることは、

 

「自分の考えや、何のためにこの事業をやっていて、どこに向かっているのかを多くの人に伝えること」

 

なのだとか。理念の浸透、ビジョンの共有が大事…とお考えになったそうです。

 

この会社に限らず、ある一定の規模になった時に、組織全体をまとめなければならないと感じたり、方向性を一つにしなければ…と、何となく肌で感じたりする時期が皆様にもあると思います。それは、規模だけでなく、社長交代の時や、会社の方向を転換する時、新たな事に挑戦しようと考える時や、特別何か新たな動きがあるわけではないけれど何となく“モヤモヤ”落ち着かない時…などもあるでしょう。

 

この、「時期」とか「タイミング」は非常に大切で、それを逃すと次にいつまたそのタイミングが訪れるかわからない…という怖さもありますが、反対に、この「時期」や「タイミング」は意図的に、いつでも創り出すことが可能だと私は考えています。

 

以前、数年間に渡って幹部教育をさせていただいたある会社では、やはり同じように理念の浸透が課題でした。年度の初めには事業計画発表会を行い、ことあるごとに社長や幹部が社員に対して話して聞かせていたそうですが、なかなか浸透しない…どうしたものか?とご相談がありましたので、「何か形にして、意味を持たせ、継続できる仕組みをつくりましょう」と提案しました。そこで行なったのが、「部長憲章」の作成です。毎朝、理念の唱和をしていても(口では言えるが)本当に理解している社員が少ない…というのが現実でしたので、自分達がこの会社の中にいて、幹部として何をするべきなのか?を考え、それを自分達の手で「憲章」としてつくり上げていくのです。そうすることによって、自分たちの考えが目に見える形になり、行動する際の“ものさし”となるのです。まずは部長にそのやり方・考え方を理解してもらい、下の階層に落としていくことで、自ら考え行動するリーダーの育成を実現しました。

 

また、別の会社では、現場の整理整頓が定着しないのが課題…ということでしたので、年末の忘年会の時に、各部署に分かれて発表会を実施しました。5S・改善の取り組み結果や工夫したこと、そこで感じたことなどを自分たちの手でまとめ、発表してもらうのです。そうすることで、「片づけなさい」「きれいにしなさい」と言われるだけの苦痛な5Sや改善は、“自分たちのもの”となり、形となり、そこに意味が生まれてくるのです。人は自ら意味を感じたことには共感し、行動しますが、一方的に強制されるものにはその意味を感じにくく、継続が困難なものです。社員に限らず、社長でさえも「継続」が苦手という人は多いのではないでしょうか?

 

このように形にしていくことで、自分ごととして意味を感じることができますし、定着化させ、継続を可能にします。こうした取り組みは、継続できて初めて評価でき、改善・向上につながるのです。このような小さな継続と改善・向上が、やがて自社のブランドの根幹となり、社員の自信ややりがいにつながっていくのです。

 

会社のブランドと聞くと、外側を飾ったり、お金をかけて他者に頼んだり、何か格好良いものを買ってきて…と考える社長も少なくありませんが、我々が考えるべきはまず「内側のブランディング」です。

 

自分達らしさとは何か?何のためにこの事業を続けていくのか?お客様に提供すべきものは何で?判断に迷ったら何を良しとするのか?といったことをしっかりと固めることが先決で、外観はそれに相応しいものを身にまとう…これが正しいブランディングだと私は考えますが、皆様はいかがでしょうか?

 

コロナ禍にあって、多くの会社が方向転換を迫られる中、自らこのタイミングを創り出し、ブランドの根幹を固めていくことは、今後、事業を大きく発展させるための大切な社長の仕事です。ぜひ、皆様も今の事業や取り組みに意味を持たせ、形にしてみてはいかがでしょうか?

 

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